The review for "Alkaloid Superstar" by CRUCIAL BLAST web store

The review "Alkaloid Superstar" by ZOTHIQUE 
CRUCIAL BLAST on-line

「彼らが20世紀初頭の怪奇小説作家クラーク・アシュトン・スミスの古典的作品よりバンド名を拝借しているのは間違いない。
ZOTHIQUEという日本のバンドが彼らのファーストアルバム"Alkaloid Superstar" で体現している内容を考えるとこれは驚くに
はあたらない。ビシャリとくる奇妙なフック、超現実的な歌詞世界と混沌極まりないサイケデリックシンセ音が一体となり、切
り刻まれるようなハードコア・スラッシュサウンドがロウで骨がきしむようなスラッジに流れ込み、気の触れたカオティック・
グラインドへと畳み掛ける。作中で特筆すべきは難解かつ気違いじみたキーボードパートであり、時にその存在は禍々しい
スラッジクラストバンドの一団が相反する古めかしいロックバンドのキーボード奏者によってバックアップされているかのよう
に思わせることがある。奇妙なボーカルの声も特徴的であり、張りつめたうがいの入り交じったようなギシギシとした発声は真
に耳障りである。

 "Alkaloid Superstar"はドローニングなパイプオルガンと不可思議なアンビエント・ワー音による短いイントロによって幕を開け
る。それは時折背後に響く何かの破壊音とともに次第にぼやけた宇宙的振動を形作る。そしてバンドは8分に及ぶ暴虐的サイケ
デリック・ハードコア"The immortal"を繰り出す。歪み切ったダウンチューニング・ヘヴィサウンド、ホークウインドを
思わせるスペーシーな電子音、うねるシンセ・ノイズが渾然一体となり、濁りきったD-beatスラッシュに乗せて疾走する。曲は
そのまま打ち砕くようなスローリフへと進行する。巨大な膨張を伴う星気の如きアンビエンスがバンドの躁病的なスローモーション
・クラストサウンドを洗い流し、この危なっかしいサイケ・クラスト叙事詩とも形容できる楽曲は終焉に至る。アルバムは更なる
シンセの騒乱に導かれつつ展開する。2曲目"Frozen Gloom"はゴシックなオルガンと精神を溶解させるかのようなワー音の応酬、
あらゆる類いのワイルドなスペースロック的効果を盛り込んだローファイなHigh on Fire とでも形容するべきか。一方で3曲目
"A Lotus In The Sun"は異なった顔を見せてくれる。ぐちゃりとしたノイズ、死に蠢くゾンビのような僧の詠唱と完全に機能障害
に陥ったシンセの中で這いずるようなスラッジ。アルバム中にはひときわ異彩を放つ奇妙なノイズ/サンプリング/電子音
によるインタールード"104324649"が挿入されており、タイトルトラックの幻覚剤トリップ・ストーナー, "Alkaloid Superstar"
へとなだれ込む。

 しかしながら、これら全てはラストの一曲"Sunless"の前では色あせる。楽曲はスピーカーのきしみ、かすかなディストーション
を伴う朦朧の中から聴こえる子供の歌声によって幕を開ける。暖かく、柔らかい日だまりのようなアコースティックギターが物憂
げに爪弾かれる、もやもやとしたサイケデリック・ローファイ・ポップな冒頭部分。それは突如として、アルバムの最後の山場で
もある濁りきった激重ノイジー・スラッジメタルへと突入する。粘っこくメタリックな重さと奇妙にも荘厳でキャッチーなフック
を伴う泥濘の如き轟音。楽曲はサイケデリックな重厚感を伴うドローンへと展開する。チーチーと鳴る電子音と奇怪なシンセノイズ
がバンドを包み込み、催眠的ドゥーム・ループ(反復)とも呼ぶべき更なる高みがアルバムの終焉部分を支配する。全てがきらめく
ようなロック・グルーヴの反復、陽光を浴びているかのように豪奢なサイケデリアに溶解し、アルバムは幕を閉じる。

 押しつぶすようなストーナーリフ、腐敗したキノコの早食いのごときドゥーム、暴力的にひた走る電子音と歪んだグラインド
コア、ある種熱狂的なクスリ漬けによる突然変異。日本という国からでなくしてはありえないサウンドである」